い 一寸先は闇


ギリギリだ。この思いも。幸せも。

彼の胸の中、そっと眉をひそめて身をよじる。
「どうした?」
優しい声が頭上から響いた。
何でもない、と駄々をこねるように首を振ると、大きな手が後頭部に添えられた。
彼女の肢体を抱く左手の腕の力が強くなる。
押し出されるように息を吐いた。
「大丈夫ですよ。私が守ります。」
彼女が何を怖がっているのか、何もかも見通しているかのような台詞。
「心配ない」
再び力強く告げられる。
―切ない。
彼のにおいを胸いっぱいに吸い込み、その腕の力に陶酔する。
胸が締め付けられる―この幸せと、それが崩れ去る恐怖に。
頭を撫でてくれる右手。
手甲に覆われる闇。
「お願い。一寸たりとも離れないで」



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雰囲気。




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