*ネタばれになるので詳しいことは言えませんが、珊瑚が弥勒以外の人とあんなことやこんなことしてます。
*キララーの方は注意。
*いろんな人が、キャラ崩壊(いつものこと)
*少しでも不快に感じたらすぐにお読みになるのを止め、原作・他サイト様などオアシスで十分に休憩されることをお勧めします。
*と、いろいろ書きましたが、基本まったりのんびりな当サイト作品なので敏感な方以外は大丈夫だと思います←
*と言う訳で、俺の免疫なめんなよという方はどうぞ

























「いいのよ、いいの。だって…」
「…?」
「二番目に好きな人と結婚するのが一番いいんだってテレビで言ってた」
「二番目?」



二番目の恋人 (前篇)


「あの、かごめちゃん…?」
珊瑚は困ったように怖い顔で座すかごめの横顔を見つめる。
犬夜叉がいない。
恐らく桔梗に会いに行ったのだろう―とかごめは疑っている。
弥勒などは「そのうち帰ってくるでしょう」と言い、そのまま出かけてしまったのだが。
七宝も一緒だったので浮気ではないだろう。
「よくわかんないけど一番好きな人と結婚してもうまくいかないらしいわよ。理想とのギャップかしらね?」
「そ、そうなんだ…?」
「…」
「…かごめちゃんは犬夜叉、一番好きなんじゃないの…?」
「……はー」
かごめは大きくため息をついた。
「そう、そうなのよ。その理論だと、あいつが幸せであたしは不幸になるのよね。」
「そんな!かごめちゃんは二番目じゃないよ!」
「え?」
「そんなの許せない!」
「ありがと…でも、桔梗という存在がある限り、一番って言いきれないし…」
珊瑚が気まずそうに顔をゆがませている横でかごめは深く俯く。
焦る珊瑚だがかける言葉が思いつかない。
しかしかごめは突如顔を上げ勢いよく立ちあがった。
「あーっもう!何考え込んでんのよ私!時間の無駄だわっ。この負のエネルギーを勉強に費やしてくる!」
とそのままずかずかと宿の方に戻って行った。

珊瑚は目をパチクリと瞬かせ、顔を前に戻した。
「二番目、か…」
かごめの言をそっと繰り返す。
そして自然考え及ぶのはかの法師のことで。
(法師さまが一番好きなのは、あたしなのかな…?)
特別誰か他に一番がいるかと問われれば誰の顔も浮かばない。
そう、特別誰か、は。
(…駄目だ、法師さまは不特定多数の女の子すべてが一番好きだ。)
例え一番であったところで二番三番があるのが問題なのだが。

―あたしは法師さましかいないのに…

珊瑚ははっとして唇を噛んだ。
ほんの少しむっとした表情を浮かべ、他に好きな人を探してみる。
なんとなく脳裏に浮かぶ人物は―父と弟。
ううん、と首を振る。
彼らのことはもちろん大好きだが、弥勒と同義ではない。
他にも好感が持てる男性は数多(あまた)いても、弥勒に対して感じるような気持を持つ者は誰一人いない。
それほどまでに唯一の存在なのかと思うと、ちょっぴり嬉しいけれど、やはり悔しいと思ってしまうのだった。
(まぁずっと男同然の生活してたしな…)

珊瑚が取りとめなく昔のことを思い返していると後ろから声がかかった。
「おい」
低く柔らかい声は深みがあり、どこか彼の人に似ていた。
しかし、その口調も声音に含まれた荒々しさも彼のものではない。
珊瑚が「ん?」と振り返ると、そこには一人の男が立っていた。
惜しげもなくさらされている鍛え抜かれた身体は、どこか妖狼族の若頭を思わせたが、その肩まで伸びた髪の色は七宝のものよりももっと薄く白に近かった。
(妖か…?)
少々疑問に思うも、珊瑚は穏やかに問いかけた。
「何か用かい?」
「横、いいか?」
「え、あ、うん。どうぞ?」
と言うや否やその男は珊瑚の横にどかっと胡坐をかいて座った。
あまりの近さに、珊瑚は眉をひそめ少し距離をあける。
男は無遠慮にそんな珊瑚の顔をじっと見ている。
「あの、何?」
「いやあ、やっぱり珊瑚は別嬪だな!」
「…は?」
「珊瑚の膝枕も、上に乗られるのも悪くないが、隣で同じ目線で顔を見られるのも新鮮でいいな」
と、爽やかに言い放ち男はにかっと笑った。
珊瑚は驚きにぽかんとしていたが我に返ると
「いつ、誰が、そんなことをしたああああ!!!」
と叫び、かの法師よろしく思いっきり頬を叩いてやったのであった。

「って〜〜。珊瑚、そりゃないぜ。」
「さっきから何!ていうかあんた誰!?何であたしの名前知ってんの!?」
「弥勒の野郎、いつもこんな平手くらってよく平気だよなあ」
その名前に珊瑚ははっとする。
「もしかして、法師さまの知り合い…?」
すると、再び男は珊瑚に満面の笑みを浮かべた。
何故かこの笑顔に、懐かしさを感じた。
そのため油断した。気づけば両手を握られ、距離を詰められていたのである。
「…えっ」
「珊瑚…俺の子を産んでくれ!」
「…はー!?」
そして男は、そのまま珊瑚を押し倒し、じゃれるように首や顔に舌を這わせ始めたのだった。
混乱の極みの珊瑚だが、男の背後に白い何かが揺れているのを見た―様な気がした。


「ただ今戻りましたー」
かごめが宿に帰りつき、程なくして弥勒と七宝が帰ってきた。
「おかえりなさい」
「かごめだけか?」
「…他に誰かいるように見えるかしら?」
「ひぃぃっ!」
その射抜くような視線に七宝は飛び上がって弥勒の肩から背に移動した。
「お勉強ですか」
「…まぁね」
と言いながら気まずそうにノートを閉じた。
集中できるはずもなく実際はシャーペンでぐるぐるとを黒く塗りつぶしていただけであったからである。

「そうだ七宝、かごめ様にも先ほどのものを見せてさしあげたらどうだ」
「おお!そうじゃの!」
「?なぁに?」
流石は弥勒だ。
その一言で背で怯えていた七宝を元気づけ、不機嫌そうだったかごめの興味をも誘ってしまうのだから。
「見ろ!かごめ!とっても綺麗じゃろ〜」
七宝が掲げるそれは、ちょうどかごめの拳くらいの大きさの水晶玉のようなものだった。
中に鉱石のようなものがちりばめられており、さらに光を反射してきらきらと輝いている。
「うわぁホントきれ〜!これどうしたの?」
「弥勒が買ってくれたんじゃ!おらの宝物にするんじゃ!」
「市を見回っていたら、七宝が大層それを気に入った様子でしたので。金子には余裕があるし、だいぶまけてもらえましたしね。」
そういって弥勒はにっこりとほほ笑んだ。
「何でも願い事が叶うお守りみたいですよ。」
「へぇ〜。いいとこあるじゃない、弥勒さま」
「それ、褒め言葉ですか?」
「もっちろん」
弥勒は苦笑するが、かごめの機嫌もだいぶよくなったのでまぁいいかと思うことにする。
(あのバカ犬…自分の女の機嫌くらい自分でとりやがれ…)
とは言え、不機嫌の理由は犬夜叉がここにいないことで、どうしようもないのだが。

「そう言えば珊瑚は?」
と、弥勒が尋ねたと同時に部屋に「みぃ〜」とかわいらしい鳴き声が入ってきた。
「お!雲母!これを見ろ!ええじゃろ〜」
さっそく宝物を自慢する七宝を、弥勒とかごめは微笑ましげに見つめる。
雲母はそれをじっと見つめていたかと思うと突如それを転がして玩具にし始めた。
七宝が慌てて雲母に近寄った。
「雲母!いかんぞ!それは玩具じゃ…」
雲母はお構いなしに玉をコロコロ転がし追いかけたりしている。
七宝が追いかけても器用にすり抜けて行く。
「はは…猫は丸いものが好きですからね。」
「…でも、なんかおかしくない?」
「え?」
確かに、雲母も他の猫同様丸いものが好きだが、いくらなんでも執着しすぎじゃないだろうか。
玉を高速回転させ、すさまじい執念で追いかけている。
七宝は追いかけるのに疲れてしまい、涙目でへたっている。
「…そのようで」
弥勒が雲母の動きを止めようとした時、雲母はすごい勢いで部屋を飛び出して行った。
「あ、おい雲母!」
廊下から一瞬強烈な閃光があった。
慌てて弥勒が追いかけるが、雲母も玉も跡形もなく消えていた。

「雲母はどこ行ったんだ全く…」
宿の周りをざっと探したがその姿はどこにもなかった。
「どうだった?」
元の部屋に戻ると七宝を慰めるかごめが問うてきた。
「いませんねぇ」
弥勒が小さくため息をついた。
「珊瑚ちゃんのところに行ったのかな」
「ああ、そうかもしれませんね」
「行ってみようか、まだ河原にいると思うから」


河原にたどり着いた三人はそこで繰り広げられている光景を見ってぎょっとした。
「ちょ、ちょっと!何すんのさ!」
男が女を襲っている。
必死に抵抗を試みる女の方は間違いなく珊瑚である。
「珊瑚!!」
弥勒は慌てて駆けより、男を張り倒して珊瑚を抱き起こす。
「大丈夫か!!!」
「法師さまっ」
珊瑚は弥勒の顔を見て安心したのか、泣きそうに顔を歪ませぎゅっと抱きついてきた。
弥勒も彼女の頭と背に腕を回し強く抱き返した。
「って〜〜」
頭をさすりながら男は起き上がった。
弥勒は珊瑚を腕に抱えたまま男を睨みつける。
「てめえ何者だ!珊瑚にこんな真似をして無事で済むと思うなよ」
「そんなーいっつもしてるんだしいいじゃねーか」
「はぁ!?」
弥勒は驚いて腕の中の珊瑚を見下ろす。
珊瑚は激しく首を振った。
「さっきからあたしを知っているような口ぶりだけど、何者?目的は何だ?」
「目的?そうだな、弥勒から珊瑚を取り返すことだ!」
一同は大きく目を見開いた。
「取り返す…?」
「元彼、とか?」
成り行きを見守っていたかごめと七宝はそっと目を見合わせた。

「おい、お前ら何やってんだ〜?」
そこで間の抜けた声がかかった。
犬夜叉である。
「ちょっとあんた今までどこに…」
騒動に紛れて忘れていた苛立ちがかごめの中で再び湧きあがる。
「どこって、散歩だが…」
「ふ〜ん」
明らかに信じてません!と書いた顔で犬夜叉を睨みつけるかごめ。
「う、うそじゃねーよ…」
かごめに近づこうとしていた犬夜叉だがその威圧には勝てずじりじりと後ろに下がる。
すると、何かふわふわしたものにぶつかった。
「ん?」
振り向くと、見知らぬ男がいる。
その男の腰から生えた大きな尻尾にぶつかったのだった。
珊瑚が押し倒される前に見たのはこの白い尻尾であった。
犬夜叉はその尻尾を引っ張り、振り向いた男の顔と見比べている。
珊瑚も弥勒の腕から離れ、その様子を伺っている。
「その尻尾…」
「お前…」
男はにっと白い歯を見せた。
犬歯は犬夜叉にも負けないくらいよく発達している。
そして、犬夜叉が不思議そうな顔で男の全身を眺めた後、小さく呟いた。

「お前、雲母か…?」

「え〜!?」
機嫌の悪かったはずのかごめも含め、その場にいた全員の叫び声が河原に響いた。




(後篇)



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